*早稲田と立教全滅後、リサ家に家庭教師代金全額返却をしに行く。
リサに3月受験を勧めるも固辞される。
前回後半部分から。
「おとうさん、ご期待に沿えず申し訳ございませんでした」
「いやいやいや、よくもまぁうちの娘に半年も付き合ってくれたよ」
「いえ」
「うちのバカと毎日3時間も話してたら気が狂うでしょう」
「はい、あ、いや、そんなことありません」
「せんせ今同意したっフーン」
「いや、今のは返事としての記号みたいなもので」
「おっふぉっふぉっふぉ(←ママ)」
「こちらも初家庭教師だったのでいい経験になりました」
「パパ、あたぃは毎日怒られっぱなしだったよフーン」
「リサは黙ってなさいっ」
「バサササササ(←スイカ) 」
「ところでお父さん、家庭教師代金の返却なのですが、」
「ふむ」
「8月時の契約どおり、全額返却することにいたします。」
「ふむ」
「合計○○○万円になります。」
突然リサの目がキラリ。
「えぇっ☆そんなに!?ほしいっ」
「あんたのお金じゃないでしょ?お父さん、振込みますので口座を教えてください」
「ふむ」
「ねぇせんせっ、リサちゃんの口座はみずほ銀行だよっフフン♪」
「リサちゃんっっ(←ママ) 」
「ゲー(←スイカ)」
「ふむ、青木君、」
「はい」
「わしが会社を経営しとるのは知っとるよな」
「もちろん知ってますけど」
「今は中国と取引しておってな、」
「はい」
「好景気の真っ最中なんじゃよ」
「それが何か」
「まずな、青木君の計算した金額はうちの会社の一日の利益にも満たない金額じゃ」
「それが何か」
「いや、代金を苦労して返してもらっても、わしは何にもうれしくないということじゃよ」
「お父さんのご配慮には感謝いたします。しかし、受験した大学にすべて落ちた場合は全額を返すという契約でしたから」
「そりゃまぁそうじゃが」
「お父さんだってそれではんこを押したじゃないですか。もちろん私も押しました」
「パパっ、てんてぃがここまで言ってるんだからっ、もらってあげて☆ねねね☆」
「リサちゃんっ」
「ゲー」
「ママが怖い顔するとスイカがおびえるじゃんっ」
「リサちゃんが悪いんでしょっ」
「ゲーゲー」
「お父さん、早稲田はもちろん、ためしに受けてもらった立教まで落ちたのに、お言葉に甘えるわけには行きません」
「ふむ」
「立教、早稲田のどれかひとつでも引っかかっていれば、契約どおり代金はいただきます。」
「ふむ」
「しかしどこも受からなかったので、私のやるべきことは契約どおり返金するだけです。」
「ふむ」
「口座を教えてください」
「んー、青木君は最近何か買ったかい?」
「?えー、買ってませんけど、パソコンがほしいです」
「てんてぃまたー?夏もパソコン買ったのに??」
「うん、直接ペンで書き込めるタブレットPCがほしいんだ」
「それじゃ青木君はそのパソコンという箱自体が欲しくて買いたいのか?それともそのPCで得られる効用を買いたいのかどっちじゃ?」
「?」
「青木君だって商学部出身だからわかるじゃろ、商品を購入するのは商品自体が欲しくて買うのではなく、その商品によって得られる効用を購入するんじゃ、と習ってないか」
「あー、そういや一年生の時に習いました」
「そうそう、たとえば石鹸を買うのは、石鹸自体が欲しいのではなく、それを使うことによって手が清潔になる、という効用を買ってるんだってことじゃよ」
「そうですね、私がタブレットPCを買いたいのはそれでプリント作ったりしたいからです」
「あのな、青木君、わしはな、この一人娘がかわいくて仕方がない」
「はい」
「しかし、かわいがって育てたらこんなのになってしまった」
「こんなのってなにっ、パパひどいっ、ハゲてるくせにっ」
「ゲゲゲゲゲゲゲーーー」
「ママにらまないでよっ」
「わしはな、娘がこれからの人生を歩んでいくうえでな、」
「はい」
「自分を律して、目標に向かって努力できる人間になって欲しいと思ってるんじゃ」
「はい」
「その教育がわしでは出来ないから、君という商品を買った」
「…」
「君という商品を買うことで求めていた効用は、娘が努力できる人間になること」
「この半年間の娘を見てると、今までになく自ら勉強を頑張っていた」
「この経験は今後必ず生きるはずじゃよ」
「君を買っても娘がちゃらんぽらんなままだったら金返せといいたくなるけど、」
「君という商品はわしの求めていた効用をしっかりと与えてくれた」
「…」
「わしが買ったのは、合格という効用ではないんじゃよ。わしはよい商品を買えたと満足をしとる。いいから黙って代金はもらっておいてくれ」
「…」
「パパいいこと言うね(←小声のママ)」
「えーもったいなぁーい、」
「青木君、どうじゃ、ここはひとつ、意地にならんと引き下がってくれんか」
「…(パパ)」
「…(ママ)」
「…(リサ)」
「…いや、やっぱり返金しますっ」
「え(←パパママ)」
「えっ☆(←リサ)」
「あーもー、青木君も意地っ張りじゃな、」
「返金します、どこも受かってないですから」
「やったぁー☆、マサてんてぃがんばれっパパに負けるなっ☆☆」
「ゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲー」
「ママちょー怖い顔っ」
「だいいち毎日3時間も授業し続けて、そんな額じゃまったく足りないじゃろ、受け取っときなさい」
「いーえ、返しますっ、どこも受かってないですから」
「せんせっ、受かってないって言いすぎっ☆」
ピンポーンピンポーン
「あらっ、誰かしら、リサちゃん出てきて」
「はーい」
「青木君なぁ、いいからもらっときなって、払わないとこっちが気持ち悪いんじゃよ」
「だってここで甘えると俺の人間偏差値が下がる気がするんですよ」
「そりゃ立派だけど、わしらからすれば不満がないのに何で返金されてるのかわかんないじゃろ」
「いーえ、返金します、どこも受かってないですから」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁー」
玄関からリサの叫び声。
「せんせっぎゃぁぁぁーせんせっんがっ、ぎゃぁぁぁぁー」
「ゲゲゲゲゲゲゲゲーバサバサバサどんっ」
スイカがビビッて飛んでガラスにぶち当たる。
「どうした、郵便屋にケツでも触られたか」
「バカっ、てか触られてもいいっ」
リサがテーブルの上にどんっと置いたのは大きめ封筒。
家族3人+私で黙って覗き込む。
[立教大学入学書類在中]
「せんせっ、これ入学書類じゃないのっんぎゃ、受かったんじゃないのんぎゃぁぁぁ」
「んなわけないだろ、立教は補欠制度があって、リサは補欠にもならなかったじゃないか」
「んじゃこれなによっ」
「先生、これはほんとに入学書類じゃないかしら(←ママ)」
ママはもう涙目。
「いや、補欠じゃないと発表後に追加合格なんて来ませんよ」
「せんせっ、開けてみりゃわかるよっ」
「そりゃそーだ」
「ビリビリビリっ」
「落ち着けってば、はさみ使えよ」
「いいのっあぁ」
ぼとっ。
あせりすぎで封筒が床に。
「不吉っ、」
パパは黙ったまま。
リサが一番上に入っていた紙を引きずり出す。
ビリビリっ。
「あぁぁ、やぶれたっ」
「いいから見せて」
[合格証書]
[○○理沙 殿]
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
受かった?
なんで?
ママ号泣。
パパがにやっと私を見て一言。
「青木君、返金する理由がなくなったみたいじゃな」
■家庭教師バトル 完■

